東京會舘に行きたくなる本「東京會舘とわたし(上・下)/辻村深月」

こんにちは。主婦ブロガーのさがみです。

辻村深月さん東京會舘とわたし」の上下巻を読みました。大正11年東京丸の内で創業、およそ100年近い歴史を持つ東京會舘。様々な時代にそれぞれの立場から東京會舘を愛した人達の心温まる優しいお話でした。

東京會舘とは

東京丸の内、皇居の目の前にある東京會舘。宴会場、結婚式場、レストランなどで利用ができる施設です。

"世界に誇れる施設ながら、誰でも気軽に利用できる民衆のための社交場"として大正11年11月に創業されました。

創業1年未満の大正12年9月に関東大震災に見舞われ一時営業中止となるものの昭和2年に復旧して営業再開、太平洋戦争前には大政翼賛会の本部として「大東亜会館」に、戦争後にはGHQによる接収により将校のクラブとして「アメリカン・クラブ・オブ・トーキョー」と名前や役割を変えましたが、昭和27年にGHQによる接収が解除され再び日本人のもとに「東京會舘」として戻ってきました。

昭和46年に建て替え工事が完了して2代目本舘として営業再開、平成27年から2度目の本舘建て替えの工事のために現在一時休館中。平成31年1月に3代目新生本舘として帰ってくる予定です。

東京會舘とわたし」を読んで思うこと

上巻は昭和46年に建て替えられる前の旧館での出来事、下巻は建て替えられた後の新館での出来事が書かれています。

こんなに歴史ある素敵な建物の東京會舘ですが、関東に住んでいながら数年前に友人の結婚式で訪れるまで全く知りませんでした。本書で東京會舘の歴史を始め、色々なことを知ることができました。

プルニエ、ロッシニといったレストラン、現役のシェフやパティシエが教壇に立つクッキングスクール、贈答品として今も愛されているプティガトー、朝や昼間の一杯としてアメリカ兵士たちの間で流行ったミルク入りのジン・フィズ…。

東日本大震災の日を書いた第八章の冒頭の手紙は、実際に東京會舘にあてられた手紙から大部分を引用しているとのこと。

本作は実際の出来事がベースになったフィクションです。

歴史ある建物には、関わった全ての人たちそれぞれに思い出に残るストーリーがあります。それを感じる作品でした。

あと芥川賞直木賞の授賞式も東京會舘で行われているのですね。最終話の作家のお話は臨場感があってまるで著者である辻村深月さんの実体験のように感じました。どうやらご自身が直木賞を受賞したときの体験を元に書かれたとのこと。納得です。

色々書きましたが本を読んで一番強く思ったことは、東京會舘に行きたい!レストランで食事をしたい!ということです。料理が美味しそうで、美味しそうで…。

でも高そう〜、いくらくらいかしら?と本を読みながらネットで調べたら東京會舘は現在休館中!

著者は建て替え工事が行われるからこの本を書かれたのですね。最後まで読んでようやく分かりました。

 

東京會舘のレストランで食べてみたいものトップ3

1位 コンソメスープ

第六章の主人公がレストラン ロッシニで緊張してコース料理を食べていた中、思わず「おいしい!」と声を上げてしまったほど感動したコンソメスープ。

澄み切った琥珀色のスープは三日がかりで作られるとのこと。家で作るコンソメスープとは一味も二味も違うのでしょうね。想像できません。

フランス語で『完璧』という意味があるというコンソメスープ。知っているようで知らないコンソメスープの違いを舌で感じて感動を味わいたい!

私も取っ手のついたタスカップを両手に持ってコンソメスープを飲んでみたいと心から思いました。

2位 舌平目の洋酒蒸(ボン・フアム)

第二章や第三章で出てきた、大正時代の創業の頃からの東京會舘の名物「舌平目の洋酒蒸」。仏蘭西料理で結婚式の定番料理でもあります。

創業当初から人々に愛された伝統の逸品を食べないわけにはいきません。普段レストランでは魚料理より肉料理を注文することが多い私ですが、いつか行く東京會舘での食事では舌平目の洋酒蒸を絶対注文します!(知ったこっちゃないw)

3位 若鶏のカレーライス

第八章で出てきたクッキングスクールで教わることができるというカレー。

鶏肉だけのシンプルなカレーとのことだがお客様に出せるほど本格的な味とのこと。

ポイントは玉ねぎ。玉ねぎを細かくみじん切りにして弱火でゆっくり炒める。みじん切りに20分、炒めるのに40分。

何とも気が遠くなる作業…。どんな味なのかしら。うーん、ぜひ自分で作って食べてみたい。

どんなに玉ねぎを丁寧に炒めても市販のルーじゃ台無しだよね。玉ねぎと同じくらいスパイスの配合が重要なのではないかしら。

どうやら現在もクッキングスクールで教わることができるようです。通常コースは高すぎて無理だが、はじめての人限定の一日だけのコースがあるとのこと。

https://odl.abc-cooking.co.jp/one/lesson/search_result

2018年6月後半メニューが若鶏のカレーライスだったらしい!既に受付は終了!!残念!!!

次回開催時には必ず申込むことを決意。他にもお得な体験コースが色々あるので気になる人はチェックしてみてください。

おわりに

辻村深月さんは同世代の作家さんということもあってデビュー当初から読んできました。メフィスト賞を受賞してデビューしてミステリー作家という認識でしたが、今は様々なジャンルを書かれているのですね。

女性同士の何とも言えない関係性や思春期の心のドロドロした気持ちを書くことが得意な作家さんというイメージです。自分自身の内面を暴かれているようでときには身をよじるような感覚を味わう作品もありました。

でもこの「東京會舘とわたし」はとにかく出てくる人たちが全て素敵で親切で努力家な人ばかりです。いい意味でも悪い意味でもキレイな物語です。人によっては盛り上がりに欠けて物足りないと思うかもしれませんが、私は読んでいる間中穏やかで優しい時間を過ごすことができてとても好きな小説でした。

来年の建て替え工事完了後には東京會舘を訪れてコンソメスープと舌平目の洋酒蒸を味わいたいと思います!